shichigoro-shingoさん
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岩田
昔、河鍋暁斎(※1)の大和絵、美術館で見て、すごく感動したことがあって。
展示会場の最後のほうに暁斎のスケッチ画というか、練習画が展示してあったんですね。
あのころの日本画って、写実とかじゃないから、いかに一筆でささっと描くか、そんな訓練をしてたらしくて。暁斎がそこで鐘軌の絵を筆描きしてるんですけど、それ見て僕びっくりして。鳥山明のスーパーサイヤ人の衣服の襞、そっくりなんですよ。
鳥山明はこういうところも勉強してたのかなあと思って。
※1:河鍋暁斎 … 幕末から明治初期に活躍した狩野派の画家、浮世絵師。錦絵から幽霊画に戯画、紙袋のデザインまでマルチに活躍し、技巧の高さでも知られる。
shichigoro-shingo(以下、shingo)
今はなくなったけれど、昔の漫画って、入りと抜けに対してすごくこだわるんですよ。

岩田
入りと抜け?

shingo
あのー、漫画の線を描くときに、入るところがあって、抜けるところがあって、それって日本画の一発描きするときみたいなもので、どれだけ力を入れて線を描くかっていう。

岩田
ああー。その伝統ってどこまで残ってるの?

shingo
もう今は西洋の気質が入ったんで。

岩田
ちばてつやさんあたりはありますよね。

shingo
で、「バガボンド」やったときにの井上武彦さんも墨絵とかで。
今現行で漫画やってる人の中で、やっぱ井上さんはすごく強いのかな。「リアル」を描いてるときはまた線が違う。すごく淡白な線を入れて描いてるんですけど。
やっぱあの人って上手い。漫画によって絵の使い分けをするけれど、日本画の感覚が入ってる。
現時点で最高峰の絵を描く人って、井上武彦かな。すごく強いなって思うんですよね。
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岩田
ああ、そうなんだ。

shingo
最初に「スラムダンク」でヤンキー漫画描いてるときは、それなりに需要のある感じの絵で、キレイだったし。
森田正則さんが「ろくでなしBLUES」なんか描いたのも、あれ、劇画じゃないですか。劇画がまた新たに少年誌に持ち込まれた。
でも昔のホントに、それこそ70年代、80年代ぐらいに活躍した漫画家の人っていうのは、線一本に対しての気の入れ方っていうのが、日本画的な雰囲気があるかなあ。

岩田
昔、いろんな漫画家たちが描いた年賀状っていうのを、ずらーっと特集してあったのを雑誌かなんかで見たことがあって、ちばてつやさんとか白土三平さんとか、ハンパなく上手いんですよ。
筆ですよね。

shingo
線を、はじめて大人向けの漫画にする線を作った人。
だから、いちばん最初に漫画家の神様として手塚治虫がいて、で、白土三平が劇画っていうものを作る。
それが世の中の流行りになって、「あしたのジョー」を描いたちばてつやが出てきて。
そっから、どっかのきっかけで大友さんが出てきたんですよ。「AKIRA」を描いて、デッサンをすごく上手く描いて、アメコミ風な感じの。

岩田
もう大友さんのときは筆じゃないんだよね。洋画的な、海外的な感覚?

shingo
そうですね、海外的な感覚。アメリカ人が思ってるデッサンとか、それをしっかりとってる。ほんとに絵が上手い人が出てきたっていう感じ。
それを手塚治虫が見て、「大友君の絵は僕でも描けるよ」って言って。すごく負けず嫌いで。
手塚治虫が素晴らしいのって、神様っていう立場を持ちながら、つねに現役であり続けている。で、最終的に作ったのが「ブラックジャック」だったわけですよね。手塚治虫なりの劇画、シリアスな漫画の作り方っていうのを、ブラックジャックに持ってきて。
なんかねえ、僕、ほんと漫画家大好きで(笑)。
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岩田
絵の力ってすごいじゃないですか。何も説明してないのに、レスポンスがくるわけだし。

shingo
やっぱこの歳になってからですけど。ちゃんと自分がこれをやっていけるかなって感じられるのが、ほんとここ最近になってなんですけど。
そういうふうに興味を持ってもらえるものを作れる…。
でも、いろいろそうですね、先駆者の人たちが、みんなやっぱマイノリティー精神があるおかげなのかなって。
イワタさんと同い年くらいで、キックボクシングやってて、日本で1位の、まだ現役でやってる人がいるんですけど。藤牧さんっていう人で、その人、地元一緒で仲良くて。その人、関西出身かなんかなんですけど、すごい優しいんですよね。実際リングの上で闘って強い人っていうのは、単純にやからが強いのと、違うじゃないですか。
僕、その人に一時期いろいろお世話になって。その人と一緒に働いたりして。力がハンパなく強くて、人柄的にすごい優しいんですよね。人間が、なんだろうな、生粋に、強い。才能的にというか、天然で持ってるものが強いわけでは決してないんですね。藤牧さんは努力の人だと思う。結局、そういうのが人間の強さだと思う。
で、どっちがいいわけじゃないんですけど、自分のタイプが、その、根が弱いっていうのが自分でわかるんで。こういうふうに海外からスタートさせるっていうことだって、ある種、日本人に相手されないっていうのが自分でわかってるから。それはコンプレックスの裏返しで。じゃあ逆輸入でやってやろう、って思ったりとか。
うーん。やっぱりなんか、そこがオレは人間の底力に繋がってるんじゃないかなって。

岩田
僕が反応したってことは、10人に1人は、いや、30人に1人くらいは。

shingo
ほんとですか?
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岩田
でも思うんだけど、レディーガガって、何人に1人があれを面白いって自発的に思って反応できてたのかって思うんですよね。10人に1人もいないと思うんですね。若い世代である程度価値観も一致した世代のあいだですら、10人に1人も自発的には反応してないと思う。

shingo
ファッション的な人に思われてるけど、やっぱレディーガガも努力の人だと思うんですよね。もともと太りやすい体質で。身長も低いし、すごくコンプレックスの塊で。

岩田
僕が思うに、レディーガガは30人に1人くらいしかウケないと思うんですよ。でもそれが、世界でいちばんウケてる人になるっていうところに。なんだろうね。
あれ、30人に1人を増やしていけばいいっていうのと、その増やす過程っていうのはたぶんどこかでスイッチが入ると、ササーとドミノ倒しみたいになっていくみたいな過程があるんだと思うんだけど。
そうするとマイノリティーって何なのだろうと思って。30人に1人しかオレのこと理解してくれない、って言ったら、確かにマイノリティーだよね。でも僕はレディーガガもそうだと思ってて。でも、世界で一番メジャーな人になってる。
例えばまっちゃんのお笑いって15人に1人くらいじゃない。分かる人って。

shingo
どうだろう、オレ、もっと少ないと思いますけどね。

岩田
深いところまではあれだけど。「他の人より面白いなあ」くらいに感じる人の割合といったら、それくらいなのかなあって思うんですよね。

shingo
「面白いと言われているから面白い」っていう人がほぼ、でしょ。
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岩田
そうそう。伝染するでしょ。
だから自分で判断する人っていうのは少ないじゃないですか。周りが面白いって言ってるから面白いってことになっていく。その流れがザーと拡散していくじゃないですか。あれが拡散しちゃったときにメジャーになる。だからマイノリティーとかいっても、わかんない世界だよなあと。
そうはいっても拡散しないタイプの人とする人との差はあるのかもしれないけど。
でも、10人中7、8人に好感を持たれるなんてのは何のコンテンツも残さないわけで、どんなメジャーな人でも、もともとは30分の1のマイノリティーだったんじゃないのって思って。

shingo
そうですね。僕はそう思います、世の中を作ってける人っていうのはそういうマイノリティーな人から始まるんだろうなと。
それがどっちに転ぶかはわからないですよ。それがメジャーに繋がるか、それともマイナーなまま終わってしまうのかっていうのは。きっかけだと思うんですけども。
やっぱ、ちょっと変わったものというのは、マイノリティーって言われてる人たちが作ってってるだろうなと。自分もそういう人たちに惹かれるし、そういうふうになりたいなとは思いますね。
ハリウッドのメジャーな人とかでも、やっぱりそうだと思うんですけど。
シャーリーズ・セロンっているじゃないですか。

岩田
うん。

shingo
もともと金髪美人って言われる、アメリカのこてこての感じの役しかこなくって。役者としてそういうふうに見られるのが彼女はイヤで、「モンスター」っていう

岩田
やったね。
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shingo
あれ、すごくないですか?

岩田
ねえ。

shingo
あのメイクをやって、あのダラダラな身体を作るっていう。
あれは役者魂だと思うし、それまでの自分を変えるためにあれをやったからこそ、またそれでアカデミー賞とって。またそのためにスタイルを戻して、授賞式に出るときにはすごくキレイなシャーリーズ・セロンに戻ってたりする。
クリスチャン・ベールも「マシニスト」をやったじゃないですか?
寝ることができなくなってどんどん痩せてく人の映画で。
あの人も、肉体の、役に対してのストイックさがすごくって。すごいカッコいいなあと思って。

岩田
松田優作が言ってるじゃないですか。
上手く喋れないんだったら、舌を切って調整しろと。

shingo
それですよね。

岩田
ロバート・デ・ニーロとかもそうだよね。アル・カポネの役で何十キロと太ったりとかね。

shingo
そうそうそう。

岩田
アメリカ人って、人間の身体を機械のように捉えてて、変形可能みたいな意識があるじゃないですか。人間メカニズムみたいな思想があるんだなあと。
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shingo
クリスチャン・ベールだって、デビューのときは、ただのイケメンだった。でも今の役者さんで、ただのイケメンのままでまっとうしてる人って、誰もいないと思うんですよね。イケメンだったらイケメン役に応じないで、それをどういうふうに壊すかっていう。

岩田
呪いのような陰の部分はかならずどこかで出てくる。

shingo
すごく闇だと思うんですね。
ディカプリオ。ジョニー・デップ。相当だと思いますよ。
そういう闇の部分を追ってくのがすごく素敵だなって思って。
ある意味、それまでのそのイメージについてきてる人を切り離す作業をしてて。
で、それを切り離して、別の人たちから「このいかれたやつは誰だ?」みたいになって。
スティーブ・ブシェミ(※2)ってわかります?

岩田
わかります。

shingo
僕、スティーブ・ブシェミ大好きなんですよ。
あの人の顔って、すごいじゃないですか。何とも言えない。

岩田
もう俳優になるべくして生まれたような顔ですよね。
※2:スティーブ・ブシェミ … 米国の俳優。「ファーゴ」の殺し屋役など、90年代を代表する名バイプレイヤーとして知られる。
shingo
もうあれは誰も勝てない顔というか。
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岩田
演技めっちゃ上手いしなあ。

shingo
演技上手い。 でも意外とスタート的にイメージはスタイリッシュな。
なんだけなあ。映画のタイトル忘れちゃったんですけど。みんなカラーで呼び合う感じの強盗グループの映画が。

岩田
「レザボアドッグス」?

shingo
ああ、そう。「レザボアドッグス」。ピンクかなんかの役で。

岩田
ピンクはダサい役じゃなかったでしたっけ?

shingo
あれ、ダサいですか? あれカッコよくないですか?
あのときのブシェミって、最高にカッコいい、僕んなかではすごくスタイリッシュなイメージで。
あと、なんだっけ、なんだっけなあ、すっげえ好きなのに名前忘れちゃった。
「シド・アンド・ナンシー」の人。

(2人とも、だいぶお酒が入ってきています)

岩田
えーっと、ゲイリー・オールドマン。

shingo
ゲイリー・オールドマン! そう。
ゲイリー・オールドマンって最高にカッコいいじゃないですか。
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岩田
うん。

shingo
最高にパンクだし、すごいキレてる感じの悪役をどんどんやってて。
「レオン」の悪徳警官、最高にセクシーな悪役をやって。で、そのあと、「ハンニバル」か。「ハンニバル」でヴァージャーをやって。ぼろぼろのメイクで、車いすで、最後にブタに食われて死んじゃうみたいな感じの役をやって。すごいインパクトのきついところで終わって。
で、「バットマン」に入ってから市民的な警官だったりとか、「ハリーポッター」に出たりとか。それが、きっかけとしては娘が生まれたからとか。そういう悪役はしたくないみたいな感じで。「いいおじさんみたいなのをやりたい」って言って。
実際、本当にそういうふうに見えちゃうんですよね。すごくセクシーで、すごく悪くって、すごくカッコ悪いこともさらっとこなして。そういうイメージだったのに、もうコッテコテのアメリカ市警みたいな警官役になって。「エェ~っ!?」って思いつつも。
でもそれは、逆パターンですよね。

岩田
シンゴさんの挙げてる俳優は、ぜんぶ存在が際立つ俳優ですね。

shingo
そうですね。
メジャーに行っても、マイノリティーな魅力を持ってるからこそ、今でもずーっと現役一線でやってられる。結局ミーハーな人たちも巻き込んで、「いい」ってなる。

岩田
拡散するか、しないか。マイノリティーからメジャーに行く人と、行かない人。
その境界線ってあるんですかね。
僕はそこ、見極められないんですけど。
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shingo
それは僕、ほんと運だと思うんですけどね。それがわからないまま消えてっちゃう人がほとんどだと思うんですけど。そこしかないんじゃないかなあ。
僕なんかほんとに、わかんないからなあ。今、どっちに転がるかわからないし。
正直、いつまで続けられるかわからないですね。

岩田
続けるべきです。

shingo
それを続けられるかどうかっていう話は。

岩田
物理的な話だよね。

shingo
そうですね。実際お金にどれだけ変えられるかどうかっていうのがあるから。
宝くじが当たってくれれば一番いいんですよね。

岩田
(笑)

shingo
(笑)

岩田
生きていければ、つまり生活環境があればいいわけですよね。
それこそ、別にお金じゃなくても。

shingo
お米もらえれば(笑)
でも、それが究極だなあと思うんですよ。
それこそ縄文時代じゃないけど、物々交換の時代になってくれれば。
© shichigoro-shingo
shingo
僕が面白いって思うのは、人の本音なんですよね。
みんな持ってると思うんですよ。その人が面白いと思うものだったりとか、その人が不安に思ってるものだったりとか、その人が嫌いだと思っているものだったりとかっていうのが、全員にあるんだなって、僕は思っているんですね。
それが、こういうふうにお酒を飲めれば、そういうふうに聞き出せれば、最高に面白いなって思う。
それは、世の中の今現在のスタイルとは、別の部分にあると思うんです。

岩田
そうだね。

shingo
それに対して、世の中の今現在のスタイルを絶対的に思っている人も逆にいて。そういう人はなかなか本音が出てこないと思うんですけども。
そういう人は、ある種、世の中の今現在のスタイルに対するコンプレックスがすごく強いんだなって思うんですね。

岩田
うん。

shingo
だから「ちょっとやそっとでは本音の話はしないよ」っていう人っていうのが、これだけコンプレックス持ってるんだって話してくれたとき、最高にお酒が美味しくなるというか。
基本的に、マジョリティーの人なんていないと思うんですよ。

岩田
うん。
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shingo
みんな個人であって、マイノリティーだと思うんですよね。
誰しもがわからないものを抱えて生きていってる。それは表層には出てこないし。その人の闇に深く入り込むと、それが例えばオレは中学校だったりとか小学校だったりとかにあると思うんですよ。根底が。
「コンプレックス=その人を支えてるもの」だと。オレは思ってるので。

岩田
河合隼雄っていう心理学者がいて。すごい似たところに入ってきてる。

shingo
ほんとですか。

岩田
うーん。その人はなんだろうな、僕のなかではすごい優しい、フラットに物事を見て、マイノリティーにフォーカスしていく人なのね。「みんなこうしなきゃいけない」っていうんじゃなくて、その人は何を思って何を感じているか、そこに共感することからコミュニケーションを始めようっていう。
「共感するとすべて人と人との関係はうまくいく」って言うんですけど、一方で、「人ってなかなか共感するのが難しい」っていうことを言ってる人で。

shingo
たしかに、難しいですね。

岩田
河合隼雄の場合はカウンセラーやってるから。
そもそも親に「あんた盗みとかしておかしいから、河合先生のもとへ行きなさい」みたいに連れてこられた不良の子たちを相手にするわけで。そういう子たちは、当然カウンセラーなんかに見られたくないわけで。来るなり「おまえを殴りたい」とかカウンセラーに言うこともある。それに対してどう共感するかっていう。
「自分を殴りたいと言っている人間に対して共感するっていうことは、難しい」って。
それはさすがに共感しがたいと思うけど、でも、なんでその子は「殴りたい」なんて言うかっていうことを考えたときに、それは共感可能になってくる。それができると、すべての人と人との関係は上手くいくし、その子も好転する。これ、本質だと思うんです。
© shichigoro-shingo
shingo
ああー。そこは、神様じゃないから。しょせん、一個人じゃないですか。それが理解できるかどうかっていうのは、その人が生きてきた環境によりけりだと。

岩田
うーん。でも努力や訓練はできるのかなと思うんだよね。
人は他人の悩みをなるべく無視するほうに動くんだけど、一方で、たとえ分からなくても想像する努力はできる。
シンゴさんの場合は、マイノリティーと呼ばれる人たちの、一般からはずれた闇に興味があってしょうがない、と。そっちを理解する方向で動いてるっていう話に聞こえて。

shingo
いや、どうなんだろう。自分と同じ闇を抱えてればわかるかなっていう。

岩田
そうだね。それも共感だよね。

shingo
そう、共感です。 正直、やっぱり理解はできないと思うんです。いろんな人に対してこう言ってても、自分と違う感じの闇を持ってる人っていうのは、結局自分が生きてきたこととは違うから、それはどうしてもお互いに無理なんですよね。 ただ、その人に対して、自分とは違うけれども、きっとそういうものを持ってるんだろう、と。誰しもがそういうものを持ってるんだろうっていうふうに、思うようにはしてるんです。
でもここまでがまあ、僕の中二の話ですよ。

岩田
えっ、ここまでが!?

shingo
ここからが老化の話ですよ。
白髪が生えてきたりとか、いろいろ身体のことを気を使うようになってきた話とか(笑)。

岩田
(笑)
© shichigoro-shingo
これでshichigoro-shingoさんとの話はおしまいです。
お読みいただきありがとうございました。