shichigoro-shingoさん
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shichigoro-shingo(以下、shingo)
僕、漫画家になりたいと思ってたときがあって。最初に、ヤンキー漫画をすごく描きたかった。ヤンキー漫画が大好きで、「ビーバップ」も大好きだし。
一番最初が、小学校のときに「湘南爆走族」(※1)で、吉田聡の。

岩田
ああ、織田裕二と江口洋介の。
※1:湘南爆走族 … 1982年から1987年まで「少年KING」で連載されたヤンキー漫画。1987年に実写映画化された。映画版は江口洋介と織田裕二のデビュー作。
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shingo
そうそう、そうですね。
ほんとカッコいいんですよね。今読み返しても、出てくるキャラ、出てくるキャラ、みんな熱いし。

岩田
でも「ビー・バップ・ハイスクール」って、前の世代じゃない?

shingo
「ビーバップ」はもうちょっと前ですね。

岩田
「ろくでなしBLUES」の世代でしょ。

shingo
「ろくでなしBLUES」もありましたね。

岩田
オレが中学一年のときに「スラムダンク」が連載始まったのよ。
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shingo
中学一年ですか?

岩田
たしかね。

shingo
中学一年ときですか、「スラムダンク」って?

岩田
たぶんそうだと思う。

shingo
そんなもんでしたっけ?

岩田
僕、バスケットやってたから。 あのときに、桜木花道が出てくるじゃないですか。「おまえまだヤンキーやってるのか?」っていう感じの描写で。で、ヤンキーとかやってない流川がいて。
それが中学一年のときだから。

shingo
あああー。

岩田
で、中学三年のときに、両国パールホテルで東京の中学生を見たときに、そのノーマルパンツ姿にショックを受けたっていう話になるんだけど。
今振り返ると、中学一年のときにすでに桜木花道がバカにされてたということは、あの時点でヤンキー文化は終わってたのか、と。

shingo
へえー。そうですかー。 スラムダンクってそんなころかあ。もうちょっとあとのイメージがあったなあ。
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岩田
いや、あれは中一、遅くても中二だよ。

shingo
そうですかあ。

岩田
バスケット部でみんなで読んでたから。第一回からジャンプで。

shingo
ジャンプで(笑)。ああ、そんな感じなんだあ。

岩田
そうなのよ。

shingo
すごいなあ。 僕、小学校のときに「湘南爆走族」読んだから、ほんとヤンキーに憧れて。
中学校入った時に「疾風伝説 特攻の拓」だったりとか「カメレオン」だったりとか、そういうヤンキー漫画がやたらいろんなところにあったイメージがあって。

岩田
「今日から俺は!!」とか。

shingo
「今日から俺は!!」もサンデーでありましたね。

岩田
「今日から俺は!!」も、もうヤンキーはダメだっていう話ですよね。
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shingo
そうですね。

岩田
でも「今日から俺はヤンキーになる」って言ってる漫画で(笑)。

shingo
高校デビューするみたいな(笑)。

岩田
だからそのときは感じてなかったけど、今振り返ると、もうヤンキー終末時代だったんだなあ。

shingo
そうなんだあ。そうなんだあ。早いですねえ。
オレ、でも、中三になるまでは、ヤンキーというものに対してなんの疑問も感じてなかったですね。
高校入って初めて…、

岩田
オレたちそうとうダサいかもしれない(笑)。

shingo
そうなんですねえ。
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岩田
流行の現象とかあるじゃないですか。僕は自分を振り返ると、昔からいつも後追いなんですよ。周りの子たちがキン消し(※2)を集めてるけど何が面白いのかわからなくて。でも、半年後に、夢中になってキン消しを集めてる僕がいる。
※2:キン消し … TVアニメ「キン肉マン」の人気を受けてバンダイなどによって作られたPVC製の人形、キン肉マン消しゴムのこと。1980年代に子どもたちの間で一世を風靡した。
shingo
ちょっと遅いんですね。

岩田
ちょっと遅いんだよ。 この遅さってダサいじゃないですか。ふつうに考えたら。
自分は遅いなあって。この遅いってことが気になって。
そしたらあるとき、こんな話を聞いたんです。
世界的な数学者がいて、おじいさんなんだけど、そのおじいさんが、世界の数学者が集まる学会で、若い数学者の新しい理論を「ふんふん」って聴いている。で、そこに集まってる他の数学者たちが「ということは、こういうことだね」みたいに適切な反応を示しているときに、その世界的な数学者のおじいさんは、とんちんかんなことを言うんだって。どうもおじいさん、わかってないらしいんですよ。
で、一年後の学会にまたみんな集まる。するとそのおじいさん、若い数学者が一年前に口にしていた新しい理論を応用したスケールのでかい理論を立ててるんだって。

shingo
へえー。
© shichigoro-shingo
岩田
なんでそのおじいさんは、最初とんちんかんなレスポンスしかできなかったかっていうことなんだけど。これは仮説なんだけど、普通の人は与えられた信号刺激に対して脳の固定された狭い領域しか使ってレスポンスしないんで、ある意味、早く適切なレスポンスができると。この問題にはここの脳領域を使うって決まってるわけです。
でもおじいさんの場合は、数学の新しい理論を聴いたときに、植物のことを考えたり、宇宙のことを考えたり、はたまた子どもがなんで泣くのかとか、そういうことを考えたり。要はまったく異ジャンルのことも考えちゃうんで、そのときは的を外したとんちんかんな反応になってしまうんだけど、一年経つとそれがまとまってくるんで、とんでもないスケール感をもってくるっていう。

shingo
ああー、すごい。 そうなると、今度は逆に世の中が後追いになってくる。

岩田
そうですよね。
だからね、後追いでもいいのかもしれない。これは勝手な自己肯定ですよ。後追いの人はもしかしたら鈍いのではなく、スケールが大きい可能性があるっていう(笑)。逆に、高速レスポンスで適切な答えを返せる人っていうのは、賢くみえるけど…

shingo
そこまで深く考えないで。

岩田
うん。

shingo
それはあるかもしれない。いや、ありますね。
© shichigoro-shingo
岩田
僕、テレビ見ててもそれ感じるんですよ。テレビの司会者とひな壇とのあいだの高速レスポンスの世界を見てても、たいしてクリエイティブではないですよね。ほんとに面白い瞬間っていうのは、たぶん、あそこで違う空気を投げ込める存在で。
そこで思うんですけど、シンゴさんの場合、明確に言語化するっていうところへ持っていかないじゃないですか。

shingo
いかないですね。

岩田
すぐに言語化までいかないで、脳をぐりぐり回してる感じがするんですよね。

shingo
いやあ、でも、違うんじゃないかなあ(笑)。そんなことはないと思うんだよ。ほんとにね、単純に言葉が苦手で。あと、やっぱね、感情に走りたくなる(笑)。これは気質なんだと思うんですけど。
実際、僕という人間はそんな何にも考えてないし。
自分がやりたいこと、今やれることをやりたい。それだけでしかないんですよ。結局すごくシンプルなことをやってるわけで。
だから言葉はあんまり必要ないかなって。

岩田
僕思うんですよ。この絵が言語だったら、すごい言語だろうなって。
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shingo
どうなんでしょうね。

岩田
と思いますよ。村上春樹みたいな感じだったり(笑)。

shingo
(笑)村上春樹もよく読んだなあ。 頭良くなりたくていろいろ読んだりするんですけど、やっぱあんまりよくわかんないんですよね。

岩田
言語が絵なんだろうね。
尊敬する二大巨頭の方も、そんなに言語を駆使する方ではない? やっぱり絵ですよね。

shingo
絵ですね。
人柄もすごく人間的なんですよね。作品を見てて、勝手なイメージですけど、中村さんも松岡さんも、すごく近寄りがたい人たちなんじゃないかなと思ってたんですよ。でもなんでしょうね、お会いしてみたら、庶民なんですよね。それが僕は嬉しくって。
話してることとかも、そんなに深い話をするわけでもなく、自分が好きなものを喋るだけ。それが心地いいというか。言葉でメッセージ的に伝えるんじゃなくて、作品で伝えられればいい。そう思ってる人たちなんだなあって。
きっと中村さんも松岡さんも、取材とかあれば喋れる人たちだと思うし、しっかりされた方たちなんだろうなと思うんですけど、僕みたいな人間のレベルにも落としてくれる。そういうのがすごく嬉しくって。
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岩田
深沢七郎(※3)っていう小説家が昔いまして、その人が庶民についてずーっと喋ってて。
で、やっぱりね、20世紀最大の日本の作家は深沢七郎だって言われてる。
※3:深沢七郎 … 山梨県出身のギタリスト。1956年「楢山節考」で小説家としてデビュー。朴訥とした文体で近代文学の枠組みを飛び越えた。埼玉で農場を開いたり深川で今川焼のお店を開いたりと、奔放な人生を送った。
shingo
今現在?

岩田
そうだね。もう亡くなられた方だけど。今現在、そういう評価になりつつある。
深沢さんはね、やっぱり別次元で。近代小説みたいなものがあったけど、深沢七郎だけが縄文時代まで通じてしまってて。「これこそが作家だったんだな」って言われ始めてて。その深沢さんが、ずっと庶民のこと言ってるんですよ。深沢さん自身の文体が庶民的で、やっぱ普通の小説家ではないですね。

shingo
僕、思うんですけど、庶民こそ人間じゃないですか。
その庶民を描くっていうことは、結局人間を描いてるっていうことなんだなって思うんですよね。

岩田
これはとんでもないことですよ。
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shingo
すごいですよね。それこそスタイルでもなんでもなく、誰でもわかることを表現するってことですよね。

岩田
僕、ぼろぼろ泣いちゃうんです。「楢山節考」読んで泣き、「笛吹川」読んで泣き、「甲州子守唄」読んで泣き。
で、なんだろうな、僕は深沢七郎ではないな、って自分ではわかるんです。僕はやっぱり脳で考えてるから。ただ、オレ、なんで泣くんだろう。深沢文学読んで泣くっていうことは、それは深沢さんの思考が深くわかるからですよ。だからオレ、深沢さんとはタイプは違うんだけど、深いところは繋がってる。
深沢七郎っていう人は、庶民の言葉、動物に近い庶民の言葉を使うんです。僕はもうちょっとロジカルな言葉を使うんだけど、これは僕の生き方でもあって。
深沢さんが見ている庶民の世界を、ロジカルな言葉に少しでも翻訳できた時に、今までよりもう少し広い人にというか、明確に伝わるのかなって。そういう気持ちが僕にはあるんですよ。それは僕の傲慢かもしれないけど、なんだろうね、もしかすると僕はそこで生きてもいいのかなって思ってるのね。

shingo
僕たち初対面じゃないですか。
でも、すごく勝手ながら、イワタさんと出会ったときに、たぶんいろいろうまくやってくれるんだろうなって。
自分ではたぶん、今日ここで話してるようなことって仲間内でしか喋れないことで、公に出したことなんてないですし、当然、イワタさんのフィルターを通して、なにかしらのカタチにして、うまく伝えてくれるんだろうなって。いや、伝えてほしいっていうのとはまた違うんだけど。
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岩田
僕自身は、伝えなきゃいけないと思ってるんだけどね。
でもシンゴさんのほうが拡散力持ってるから、そんなシンゴさんを前に今、僕は何を言ってるんだろうって思って(笑)。
でもまあね。微力ながら。

shingo
これも出会いだと思うし。
僕はお酒そんなに飲めないんですけど、飲み屋さんで仕事してたとき、場末のバーじゃないけど、いろんな人がくるんですね。
やっぱお酒ってすごく面白い。
当時は面白いとか感じてなくて、むしろある意味、イヤだったんですよ。酔っぱらいは嫌いだし。でも、今ふりかえると、いろんな人がきて、いろいろ喋って、いろんな人間の視点を残してくれる。そういうの、自分のなかでは財産なんですよね。

岩田
そう感じれるというのは、シンゴさんの吸収力が高いんだと思います。

shingo
どうですかね。
働いてるときは気づかないんですけどね。
後々考えてみると、なんかそういうイヤな人だったりするほうが、自分のなかに残ってるというか。苦手だなあって思ってる人の方が。
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岩田
喧嘩しなさそうに見えるなあ。

shingo
僕ですか?

岩田
うん。

shingo
いや、喧嘩しますよ。

岩田
そうなんですか。
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shingo
あとあとになるとそう思う、っていうだけで。

岩田
僕はね、よく人を怒らせますね。

shingo
でも意見が違ったりするほうが、ちょっと面白いんじゃないかなって思うんです。熱くなれるというか。
「こいつ嫌いだわー」とか「こいつとホント合わないわー」とか思ってても、何かのきっかけでちょっと1つ、同じところが見つかる。繋がってる部分が見つかる。そういうのがすごく好きで。しかもそういう人とのほうが、あとあと長く付き合えたりして。

岩田
今も付き合ってる方にそういう方がいるんですね。

shingo
そうですね。今は誰とも喧嘩する気はないですけれども。
でも、ちょっとこの人とは意見が違うなって思う時って、自分の中でかっと熱くなるんですよ。それがすごく自分の中で心地いい(笑)。
そうやって喋ってるときって、お互いの本音がバーッて出てるときなので。
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