shichigoro-shingoさん
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岩田
さっきの、フランケンシュタインだね。
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shingo
ボリス・カーロフ(※1)ですか。
※1:ボリス・カーロフ … 戦前ハリウッドで活躍したホラー映画界の大スター。映画「フランケンシュタイン」(1931)のモンスター役で有名に。
岩田
ボリス・カーロフね。

shingo
ボリス・カーロフのフランケンシュタインがいちばんいい顔してますね。

岩田
古いね。

shingo
すごくいい顔してるなあと思って。
最高に優しい表情を僕は描けたと思ってるんですけど。

岩田
うんうん。
…これも自分で作ってるんですか?
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shingo
そうですね。粘土で。

岩田
これ粘土なんだ。

shingo
石粉粘土っていう。

岩田
へえー。金属みたいに見える。

shingo
そうですね。スプレーとアクリル絵の具で。

岩田
普通の粘土とまた違うんですか?

shingo
どうなんですかね。僕もぜんぜんわかんないんですよ。ただオモチャが好きで。

岩田
固まるんですよね?

shingo
そうですね。いちおう固まるんですけど。やっぱそこまで頑丈ではないんで。
ちょっとオモチャ作って売れるようになりたいなあと思って。
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岩田
でも一点ものでしょ。
プロトタイプ作って大量生産するとかじゃなくて。

shingo
今年、これからなんですけど。目標の一つとしては、複製、まあ、せいぜい何十体とかだとは思うんですけど、そういうのを作って、売りたいなあと思ってるんですけど。
僕には2大憧れ的な人がいて、CGやってる人では中村一彦さんで、造形やってる人では松岡ミチヒロさんという造形作家さんがいるんですけど。その松岡さんは、もともとモデルが大好きだった人で、モデラーだったらしいんですよ。

岩田
モデラー?

shingo
中学生のときから戦車とか飛行機とかプラモデルとか、そういうのをカスタマイズするのが好きだった方で。で、すごくオリジナルでやられてて、一昨年くらいまではサラリーマンで建築やられてた人なんですけど。その人も最近独立して、個人でいろいろやられるようになって。で、その人のモデルがやっぱすごいカッコいいんで。
やっぱ、そういう方と比べると僕なんか初心者で、モデルに至っては素人なんで。
なんだろうな、自分にとっては絶対的な高みとして、中村さんと松岡さんという二大巨頭がいますね。
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岩田
そうなんだ。

shingo
たぶん、いくらやってもその人たちには近づけないって思える。
そういう人と知り合えたのは良かったですね。今こういうかんじでやれるようになって。

岩田
まるで違うんですか?

shingo
なんでしょうかね。まるで違うんですね。やっぱ熱量が違いますかね。松岡さんなんかは中学校んときからやってますし、中村さんだったら作品一つ作るのに時間を半年ぐらいかけるっていう、

岩田
なるほどね。

shingo
持ってる感覚が違う。
僕なんかしょせん一般人。ただの人だなって思っちゃう。

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岩田
そうなんだあ。
でもピカソとかジャン・コクトーとか、5分くらいで描いちゃう世界があるじゃないですか。

shingo
あー、うんうん。
でもそれはやっぱ、そこに至るまでの時間がすごいからじゃないですかね。

岩田
シンゴさんは、なんていうのかな、ほかにない匂いを感じるんですよ。そこにみんなは深みを幻視するんですよ。意味があるんじゃないかと。でもやっぱひたすらビジュアルとしてやってるっていうのがわかる。
なんかそのね、意味とか深さとかいうのを幻視させる、そういうものすごい力を持ってる。これはなんか違うな、っていうのを感じたんですよね。
マニアックなのかなあ。

shingo
マニアックですよ。

岩田
でも今となっては、ギーガーより大衆向けの絵ですよ。
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shingo
そうだと思いますよ。よっぽど僕は寄せてると思うんですよ。人目が気になる。

岩田
僕はいい意味で言ってるんですけど。ギーガーのほうがオタクっぽいというか。

shingo
ギーガーが素晴らしいなって思うのって、美術賞としてあるじゃないですか。普通に印象派の人たちとか並んでいるところでギーガーがいるところが、凄いなあと思って。

岩田
ああいうスタイルを最初にやった人なんですか?
プレ・ギーガーみたいな人はいたんですか?

shingo
プレ・ギーガーみたいな人はいないんじゃないですか。
やっぱ最初じゃないですかね。

岩田
最初だったら途方もないね。

shingo
そうだと思いますよ。
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岩田
そうとうヤバい人ですね。

shingo
ほんとヤバい人だと思いますよ。
「ホドロフスキーのDUNE」ってあったじゃないですか。

岩田
わかんない。

shingo
ホドロフスキー(※2)が撮ろうとしてた「砂の惑星」。あれ、当初、
※2:ホドロフスキー … チリ出身の映画監督、アレハンドロ・ホドロフスキーのこと。「エル・トポ」の監督として知られる。タロット研究家でもあり、神秘的な作風でカルト的な人気がある。
岩田
「砂の惑星」って、デビッド・リンチの?
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shingo
デビッド・リンチも撮りましたけど。当初ホドロフスキーも撮る予定だったけど中止になって。で、その中止に至るまでのドキュメンタリーがあるんですけど。
その「ホドロフスキーのDUNE」で、デザイン担当した人の1人にギーガーがいたんです。
ギーガーがDUNEのイメージデッサンなんかやってて、その絵が、めちゃくちゃかっこいいんですよね。デビッド・リンチのもいいんですけど、その映画が実現されてたら、また違う意味で観たかったなあって。

岩田
ホドロフスキー、ロシア系ですよね。

shingo
ロシア系のチリ人ですよね。
ロシアはいいですよね。さっきのあったかい国の話とまったく逆になると思うんですけど、自殺率高いと思うんですけど。
オレ、ロシアのアートとか最高に好きなんですよ。なんとも言えない、暗い、

岩田
暗いね。
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shingo
暗い雰囲気も持ちつつ、でもすごく美しいんですよね。

岩田
うんうん。

shingo
アントン・セメノフっていうアーティストさんがいて。その方もデヴィアントアートで知り合った人なんですけど、ロシアの人で。その人のこと僕、好きなんですよね。描くものがロシアの雰囲気。色の感じとか。ダークなんだけど、かわいいんですよ。
ポップな雰囲気がある。すごく技術があって、すごくきれいな絵を描くんです。これこそロシア人でしか出せない色、雰囲気というか。素敵なんですよね。独特の感覚があって。

岩田
またロシアと西欧の真ん中にチェコみたいな、東欧というのがあるじゃないですか。東欧って、西欧から見ると魔術的で。

shingo
チェコとかも独特ですね。
ヤン・シュヴァンクマイエル(※3)のアニメーションも最初観たときに、すごく変な面白いものを作ってるおじさんがいるな、って思ったんですけど、歴史背景が強いなあと思って。スターリン政権でロシアが共産主義の支配下にあって、その影響下で生まれてった芸術っていうのがチェコではああいうカタチになってって。すごく闇も感じるし、でも表現としてはかわいらしく、ユーモアも見い出せる。そのバランスに僕は惹かれるのかもしれないですね。
やっぱ闇があってこそのユーモア感で。
※3:ヤン・シュヴァンクマイエル … チェコのシュールレアリスト。粘土や人形を使いコマ撮りした夢幻的なアニメーション映画で有名。
岩田
そうだね。

shingo
すごく映えるんですよね。

岩田
お笑い芸人には暗い人が多いっていうしね。

shingo
ギャグ漫画家も自殺率が高いって言いますよね。
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岩田
暗さを引き受けなきゃいけないのがクリエイターの苦しみだと思うんだけど。

shingo
すごく人間的な感じがするんですよね。やっぱ闇があってこその人間だっていう。闇の中にある明るさって、美しく見える。「ダサい=カッコいい」っていうのも同じだと思うんですけど。
人間って、割り切れないのが人間だと思うし、それこそ「芸術ってなんなの?」ってなったときに、名前忘れたんですけど、ずっとゴミの清掃をしてた童貞のおじいちゃんがいて、そのおじいちゃんが死んだあと、屋根裏部屋から大量にその人が描いた私小説みたいなものが出てきて。

岩田
ヘンリー・ダーガー(※4)じゃない、それ?
※3:ヘンリー・ダーガー … 12歳で知的障害児の施設に移され、病院の掃除人などをして生活していた。1973年、81歳で救貧院で亡くなる。死後アパートの大家が遺品整理をするなか、少女たちの性的描写を含んだ壮大な妄想絵巻物を見つかる。以降、アウトサイダー・アートの代表的な作家とみなされるようになった。
shingo
そうそうそう。ヘンリー・ダーガー。
やっぱりそれって、違うんですよね。経済を発展させるんじゃなくて、自分の中に持ってる悶々としたものを世の中に出すわけでもない。地味っていえば地味だけど、僕はそこに熱さを感じるんですよ。僕はすごい悶々としたものに対しての熱さを感じるんですよ。ほんと、そこには言葉がないですよ。
そういう言葉にできないものを、みんな持ってるべきだし、そういうものは、需要と供給とは別のところであってほしいと思うし、それを口にすることは、すごく勇気がいることだし。
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岩田
需要と供給じゃないよね。供給があればお金は入るけど。
そういう意味じゃ、お金は入らないけど、闇っていうのは機能してないわけではなくて、すごく理由があって存在してて、社会的に機能してる。
僕、今日、シンゴさんと話してて思ったのは、そういう闇の悶々としたところを言葉で明らかにするより、そういう言葉にはできないところに熱さを感じるんだなあって。言語化を超えてるわけですよね。

shingo
超えてるっていうか、僕がそこまで至ってないというか、うまく表現できないだけだと思うんですけれど。

岩田
でもやっぱり言語を超えてるんですよ。言語化しようと努力している人は、やっぱり言語化できない部分っていうのをすごい意識してて。
そういう闇の悶々みたいなものを言葉でちゃんと人に伝えるためには、ちょっと切り捨てるしかない部分があるんですよ。

shingo
うんうんうん。
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岩田
僕は自分では、何とか言語化したいって思ってるほうで。ここらへんのモヤモヤしたものがあるんだけど、それを言葉にしようとしたとき、そのモヤモヤの本当の姿は切り捨てざるを得ないものとして出てくる。

shingo
僕はたぶん、その切り捨てられる側で、そこにも意味や価値を見出したい、って思ってるんですよ。

岩田
たぶんそこは言語化できない領域なんだと思います。
ただ言語の場合、言語化をすることで初めて他人への伝達が始まるんで、その切り捨てられる部分まで伝えるためには、どうしても「そこを切り捨ててでも、言語化して伝達を始めなくちゃいけない」っていうのがあって。
切り捨てられてしまう部分にみんなが少しでも気づいてくれるように、切り捨ててはしまうけど、なるべく伝わるように言語化する人というのが、今必要なんだな。そういうことを、僕、このごろすごく感じるんです。
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shingo
それあってこそ、僕のやってることも意味があるかもしれないですね。

岩田
それは役割だと思うんだ。
さっきのケニア人の話じゃないけど、ダンスする人はいっさい言語化を要しないと思うんですよ。ダンスする人はダンスで闇を語り、シンゴさんみたいに絵を描く人は絵で闇を語る。そういう役割があって、言葉を使う人は、言語化できない闇を切り捨てながらも、そういうダンスや絵の闇に人の注意が向くように、言葉をどうにかして伝達させていく。
人って、闇を無視したがるように見えて、けっこう感心あると思うよ。シンゴさんがあんなにフェイスブックでフォロワー集めてて、世界から声がかかるかというのもそう。普通に社会的に成功している人でも、やっぱりあんなにフォロワーは集まらないわけだし。つまり、本音の部分で人を集めてるのは…
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shingo
だからたぶん、僕はそういう感じの存在になれればいいなあと思うんですよ。金銭ではなく、なんとなく惹かれるなって思われるような、そんな存在の一部であれば、嬉しいなって思う。

岩田
なんかやりたいね。じわじわとやっていきたい、

shingo
とにかく続けていければ。それしかない。なんだかんだいってそれしかない。僕はこんな年齢になって、こんなことやってるわけだから。もう、言い訳きかないし、あとはやるしかないっていうのを、どっかで腹括ったので。

岩田
こういう取材したかったんですよ。

shingo
取材になってるのかなあ(笑)
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