shichigoro-shingoさん
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shichigoro-shingo(以下、shingo)
フランケンシュタイン、あるじゃないですか。怪物系のなかでも、ちょっと特異な存在だと思うんです。 ドラキュラとか狼男とは違って、人工的に作られてるけど純粋なもの、っていう。

岩田
うんうん。

shingo
そういうの、すごくいいなあ、って思って。

岩田
なるほどね。だからなのか、哀しい話ですよね。

shingo
哀しい話ですね。 フランケンシュタイン、ちょっとウェットすぎるんですけど。
© shichigoro-shingo
岩田
ウェットなのかな。ドライでもあるよね。

shingo
僕が作ってるもの、描いてるものっていうのは、ウェット感とかいうのも、なるべく。

岩田
排除してる?

shingo
排除してる。
その子たちは、それを普通に受け入れてるし、普通にそこにある。
そういうふうなものを作りたいなって。

岩田
その視線、すごくいいですね。
その話で思ったんですけど、「火垂るの墓」(※1)ってやっぱりすごくて。
※1:火垂るの墓 … 野坂昭如の短編小説。1988年に高畑勲監督によって映画化された。戦火で親を亡くした14歳の兄と4歳の妹が綴る終戦の物語。
shingo
ああー。

岩田
あれ、すごいウェットだって、一般的には思われるじゃないですか。でも僕、あれ、究極のドライだと思ってて。
純真な子どもたちが戦争で両親失って、親戚の家へ行くんですけど、親戚に「来るな」って言われる。「おまえら、穀潰しだから来るな」って。
血の繋がってる4歳児に「来るな」っていう世界が成立するわけじゃないですか。それ、すごいドライだと思うんです。
でも、これが現実でしょ? 食い物がなくなると、人はいかにして生き延びるか、ホントの姿が出てくるわけで。
だから親戚の人が「来るな」って言ったのは、あながち間違いでもない気がするんです。現実を指し示したわけですから。自分の家も食えなくなるわけだし、自分の子どももいるわけだし、そして自分も食えなくなるわけだし。
© shichigoro-shingo
shingo
一見おばさんが意地悪に見えるけど、そうではない。
勧善懲悪のない話ですね。

岩田
世界ってそういうものなんだよ、っていうのを見せちゃってる作品ですよね。
だから僕、映画にしても小説にしても、あんなドライな作品をあんまり見たことないんです。あの限界まで切りつめたドライさには、なんだろうな、やっぱり純粋さが関わっているんですよね。そういうドライな現実に対して4歳の節子たちは文句言わないじゃないですか。

shingo
それは当たり前として受け入れてる。
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岩田
そう、当たり前として受け入れてる!
シンゴさんの絵に出てくる子どもたちやロボットたちもそうだと思うんです。

shingo
自分たちの生活をやってる。

岩田
やっぱり世界って、本来そういうものなんじゃないですかね。
だからシンゴさんの絵に出てくる子どもたちも、無力なんだろうな、って僕は感じるんですよ。

shingo
うーん…。

岩田
ピュアな子たちは無力なんだろうなって、感じちゃう。
それか、めちゃくちゃ強いかですね。

shingo
(笑)いや、僕は強さだと思いますよ。それの裏返しじゃないですか。
お兄ちゃんにしても節子にしても強いな、って。おばさんも強いし。時代的に強い人たち、強くならざるを得ない人たちというか。

岩田
強さと無力、優しさと残酷さの両極に、振り子がぶんぶん振れてる世界ですよね。自分のアイデンティティにくよくよ悩んでる世界ではない。

shingo
ああー、そうですね。
© shichigoro-shingo
岩田
そういう力強い現実感覚に僕は憧れてるんですけど。

shingo
なかなかね。やっぱり憧れですよね、自分にとっては。
決して自分はそうではないな、っていうのをすごく思いますね。
そういうふうになりたいけど、簡単に挫けるし(笑)。

岩田
挫けますね(笑)。
あくまで想像ですけど、日本はホント、銃社会じゃなくて良かったと思いますよ。アメリカ人、人に向けるじゃないですか。でも今の日本が銃社会になったら、殺人事件が増えるというより、自殺者がすごく増える気がするの。

shingo
僕、絵描く前はレゲエバーにいたんですけど、あったかい国の人って、自殺しないですよね。

© shichigoro-shingo
岩田
ああー。

shingo
どんなに貧乏でもみんな楽しく過ごせるすべを持ってたりして。

岩田
僕が以前知り合ったアーティストの人が、ケニアのインスタレーションに招待されて行って、やっぱあそこがすごいのは、ダンスの上手い人はダンスする人間として存在してる、って。
別にダンスで稼いでるわけじゃない。あいつはダンス上手いんだ、今夜も来てくれるよ、みたいな。で、お金を稼ぐのが得意な人は別にいる。その人がお金を稼ぐ役で、その人がみんなの支払い役を担う、みたいな。

shingo
すごいですね、それは。

岩田
だから役割が分担されてるらしいんですよね。絵を描くのが得意な人は絵を描いて、踊る人は踊って。
日本はそうじゃないでしょ。社会人とはこういうもので、みたいにある一定のハードルを10も20もみんなが超えなきゃいけない。でもケニアでは1つでいいから自分だけのハードルを突破したらそこで自分の役割を持つと。
© shichigoro-shingo
shingo
経済的な豊かさとは違うじゃないですか。精神的な豊かさは。

岩田
うん。お金以外のルールで成り立ってるケースが多いってことかな、って思うんです。
日本で生活しようと思ったら、お金を基準にすることをまず要請されますからね。

shingo
沖縄とか、じゃっかん違うんじゃないですか?

岩田
ああ、確かに。じゃっかん違う気がするね。僕らの幻想かもしれないですけど。
ケニア人に言わせれば「いや、けっこうキツいよ」っていう話かもしれないし、沖縄出身の子がうちの会社にもいるけど「沖縄には戻りたくない」って言うしね。

shingo
たしかにその、僕の田舎、ばあちゃんが住んでたところが山梨の村なんですよ。村の中に入ってる人たちは楽しそうに生きてる。でも、すごく村のルールがキツイんですよね。たぶんそういうのがあるんだろうなとは、感じますね。
だれも近寄れないコミューンみたいなものの力が。

岩田
シンゴさん、横浜生まれですよね。もし山梨のその村に生まれてたら、それでも結局首都圏に出てきた人なのかな、という感じはするなあ。

shingo
(笑)
© shichigoro-shingo
岩田
僕はどうしても岐阜から出たいって思って、出てきたんです。でも結局、岐阜の話をまるで財産のようにこっちで喋ってて。

shingo
やっぱり、出たからわかる。

岩田
出てやっとわかる僕はバカなんですけど。

shingo
でも、そういうもんじゃないかな。
ちょっと話変わるけど、僕、パンクが好きで。ピストルズ(※2)、かっこいいなあと。でもジョニー・ロットンって、すごくレゲエ好きなんですよね。
※2:ピストルズ … 1970年代後半の音楽シーンを切り裂いた英国のパンクバンド、セックス・ピストルズのこと。ジョニー・ロットンはセックスピストルズのヴォーカリスト。
岩田
ああ、そうなんだ。

shingo
ジョニー・ロットンの専属のカメラマンがジャマイカの人で、彼自身がすごくレゲエ大好き。すごいあったかいものが好きで。
パンクとレゲエって、一見、正反対にも思えるんですけど、そういうルーツ的な部分では繋がっていくものがあるのかなあと思うと。うん、やっぱみんな繋がってるんだなあと。
しかもレゲエという音楽自体が、黒人回帰運動じゃないけど、国を追われた人たちがやってる。ルーツですよね。こういうの、なんか、面白いなあと思って。
高校生のころ、何聴いてました?

岩田
僕ね、レッド・ツェッペリン(※3)が好きで、今もずっと聴いてるんですけど。
当時は周りがみんなハードロック聴いてて。ハードロックのCDばっかり回ってくるんですよ。僕もハードロックを頑張って聴くわけです。そんなかでツェッペリンがいちばんすごいなと思ったんですけど。
当時のハードロックファンって、ツェッペリン苦手な人が多いんですよ。ディープパープル(※4)のほうへ行くんです。
だから何となくわかったんですけど、僕、ハードロックじゃないんだなって。
※3:レッド・ツェッペリン … ビートルズ解散後のロックシーンで頂点に立った70年代英国のハードロックバンド。ブルーズ、カントリーといった民俗音楽にヘビーなロックサウンドを融合した。
※4:ディープパープル … 同じく70年代英国を代表するハードロックバンド。キャッチーで重いギターリフを特徴に「スモーク・オン・ザ・ウォーター」など今も知られる名曲は多い。
shingo
なんなんすかね、その違いって。

岩田
やっぱりあるのよ。
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shingo
対立構造みたいのがあるんですかね。

岩田
匂いとして確かに分かれるものがあって。
シンプルな言葉でいうと、ディープパープルとかハードロックの人たちって、カタチとしての様式美に向かうんですよ。
ツェッペリンとかは様式を破ったところというか、民俗音楽とかの深層構造に向かう。
だからツェッペリン好きな人って、民俗音楽好きな人とか多いんじゃないかな。第三世界の音楽が好き。ツェッペリンって、レゲエをかなり早くやってたりするんですよね。1973年くらいにもうレゲエをやってるんだけど。 ディープパープルはそうじゃなくて、クラシック音楽のほうへ行くんだよね。だから象徴的には分かれてる気がする。
僕はそう考えると、第三世界的な匂いの方へ惹かれちゃう。

shingo
なんかそれって、わかれるもんなんですかね。

岩田
ああ。確かにさっきの話でいうと、スチームパンカーとかみんなジャンルで言うわけで。でもほんとは個々で細分化してるし、一概には言えない。

shingo
確かにジャンルっていうカタチに当てはめちゃうと、厳密にはそうではないよ、ってなるんですよね。
でも、みんなそれぞれ作ってるモノってオリジナルじゃないですか。それがどっかで繋がったりする。
なんかねえ、パンク聴いてる人は尾崎豊を聴いちゃいけない、っていうのが、あったんですよ。

岩田
ああ。でも繋がるでしょ?

shingo
僕、尾崎はパンクだと思うんですよね、抑圧された社会に対しての反抗という意味で。

岩田
そういうことだよね。そこ見つけられるのがシンゴさんの才能で。
みんなジャンルで見ちゃうけど。僕はね、パイプって言ってるんですけど、パイプで見る、っていうのがあると思ってるの。

shingo
ああー。
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岩田
さまざまな物事のパイプを見せたいと僕は思ってて。

shingo
ああー。ほんとに根底的に思ってるっていうものがそこで繋がって。

岩田
そう、繋がってくる。
だからパイプで見ない人にはよく誤解を受けるの。尾崎豊はかなり誤解を受けるラインなんじゃないかな。中島みゆきも長渕剛もそうですよ。
「なんか泥臭いものが好きだね」とか言われるけど、泥臭いとか、そういうレベルじゃないわけですよ。

shingo
それを言う人って、イメージなんですよね。
根底にあるパイプがわからない。ビジュアル的な表のイメージだったり、周りからの評価で決めてたりするから。実際にその人が何を思って作ってるか、そういうのとはちょっと違うところで判断しちゃってるから、そういうふうになっちゃう。
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岩田
ちゃんと自分の眼差しで見よう、っていうことなんです。
周りの評価とかじゃなくて。

shingo
うん。

岩田
ケミカルブラザーズ(※5)と長渕剛は一緒です。
※5:ケミカルブラザーズ … マンチェスター大学出身のトム・ローランズとエド・シモンズによって結成された、英国のテクノ音楽ユニット。
shingo
(笑)
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岩田
繋がりますよ。

shingo
(笑)そうですよね。
「ダサい=カッコいい」じゃないですか。

岩田
え?

shingo
いや、僕には、「ダサい=カッコいい」なんですよ。
ホントに好きで熱くなれることをやってる人っていうのは、ダサいです。
何言われようが、ダサいこと。

岩田
何言われようが、ダサい(笑)。
でも、そういう人は、カッコいいと言われるような音楽コンピレーションも作れたりするんですよ。ケミカルブラザーズ、ウータンクラン(※6)、カットケミスト(※7)で。
※6:ウータン・クラン … RZAが率いた90年代ヒップホップのカリスマ的グループ。個性的で犯罪的なMC、香港カンフー映画をサンプリングするなど、シンプルな音構造で分厚いグルーブを生みだした。
※7:カット・ケミスト … ヒップホップグループ「Jurassic 5」の辣腕DJ、音楽プロデューサー。膨大な知識量を持ち世界の音楽を収集する生粋のオタクとしても知られる。
でもそういうところばかり理解されると、僕は長渕とかのカードを切りたくなる。

shingo
(笑)じゃあ「キャプテン・オブ・ザ・シップ」を。
いや、僕ね、長渕、ダメなんですよ。ダメだったんですよ。トラウマなんですよ。高校生のとき先輩に毎日通学のバスで、必ず長渕の「キャプテン・オブ・ザ・シップ」をずーっとエンドレスで聴かされて(笑)。
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岩田
(笑)

shingo
「いいだろ? いいだろ? ファンクラブに入ってみようか」っていうのがあったんですけど、それが、すごい苦痛で、苦痛で。
「明日からおまえが舵を取れぃ!」って(笑)。

岩田
そういう意味では、僕、矢沢永吉という人物には興味があって。

shingo
ああああー。 もう、存在ですよね。

岩田
そう、存在に興味があって。

shingo
おんなじ感じしますよね。
僕の中では長渕も永ちゃんも同じ感じがします。

岩田
すごいむちゃな言い方すると、あの方たちは、もはや音楽とかを超えてる。
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shingo
わかるわかる。だから存在なんですよね。

岩田
そこまでくると、正しいか間違ってるか、もう関係ない。勝新太郎とかもそう。態度と存在だけがある。

shingo
それがカッコいいんですよ。

岩田
それがカッコいいんです。
なんか「カッコいいばなし」になってる。

shingo
そうですね。憧れちゃう。

岩田
憧れちゃう。
© shichigoro-shingo