shichigoro-shingoさん
プロフィールはこちら
岩田
いろいろスチームパンクのような絵がある中で、結局僕はシンゴさんに反応したんだと思うんです。なんか違うんですよ、うまく言えないですけど、匂いみたいなものが。

shichigoro-shingo(以下、shingo)
確かにスチームパンク的な世界に呼ばれることもちょいちょいあるんですけど、自分ではそんなにスチームパンカーとは思ってはいないんですよ。
© shichigoro-shingo
スチームパンクって歴史をたどると根が深いところがあって。
イギリスで産業革命があって、とか、そういう時代背景をいろいろ組み込んで作っていくのがスチームパンクだったり。
このあいだ蒸奇博覧会という、大阪の阪神百貨店の上の階で、スチームパンクっぽい人を集めたイベントがあって。で、そこに参加してる人と話をしていると、機械機械した感じのものを作ってる方なんかでも、みんなやっぱりそれなりの世界観をもってて。結局ジャンルって何なのかなって。
僕もスチームパンクのものを観るのが好きだし、やってる人のことも好きなんですけど。

岩田
身体みたいな生ものと機械が合体するじゃないですか。その感覚が僕にはちょっと胸にキュッキュッてくるんです。

shingo
僕はAKIRA(※1)がすごい好きで。鉄雄の体にジェット機がくっつくときとか、あのチューブの感じというか、人とチューブがくっついてる感じが、単純にビジュアル的にバシッときて。それを今描いてる感じですかね。
基本的には中二のときと変わってないというか。
自分、中二病だなと思うんですね。中学生のとき好きだったこととか、そんときをずっと引きずってやってる感じ。それを今の自分だったらどう昇華できるかな、という。
※1:AKIRA … 大友克洋によるSF漫画。1988年にはアニメ映画化され、漫画・映画ともに想像力のスケール感と緻密な描写で話題をさらった。
岩田
そう言われると、僕も思いっきり引きずってるかもしれない。

shingo
男の人ってだいたいそういうの、あるんじゃないかなと思うんですね。自分の感性がいちばんくるときに仕入れたものっていうのは。
© shichigoro-shingo
岩田
中学一年生から二年生の時にかけて用意されたものが、ある意味、今の自分のすべてに関係してますね。

shingo
十代後半ぐらいの時、女の人にモテたいとかそういうのがあって、シャレたものとか、いろいろ手を出したりするんですけど。そんなに芯まではこなくて。
またこれぐらいの年齢になってくると、結果、戻っていくのは中学生の、そこらへんに行っちゃうのかなって。

岩田
シャレたものとかで言えば、例えば僕は中一のころメンズノンノを読み始めて。で、ケミカルウォッシュのジーンズを半分に切って穿いたり。そういうシャレた世界でもズレたとこへ行っちゃって。

shingo
(笑)僕、ダサいのがかっこいいなって思うんです。
やっぱ中学生のときは、なかなか自分の好きなものを人には言えなくて、自分で悶々としている感じだったけど、あの世界はいったい何なんだろう、と。
© shichigoro-shingo
音楽だとブルーハーツがあったりとか。あと僕、筋肉少女帯とかも好きだったんで。
今でも聴いて、やっぱしみじみヒロト(※2)、かっこいいなあと。新しい音楽もいろいろあるけど、ついついそこらへんを聴いてしまい。そうするとすごいモチベーションがあがるというか。

岩田
あがりますね。泣いちゃいますもん。

shingo
泣いちゃいますね(笑)。
※2:ヒロト … 元ブルーハーツのボーカリストで、現在はザ・クロマニヨンズのボーカリスト、甲本ヒロトのこと。
© shichigoro-shingo
岩田
そうですよ。ブルーハーツですよね。

shingo
ある意味、高校生とか浪人生くらいになったりすると、ブルーハーツって、ちょっとヤボっぽい感じの雰囲気、土っぽいというか、熱い感じっていうのが…

岩田
せせら笑う人たちがいたからね。

shingo
そうそうそう。だからなかなかこう
© shichigoro-shingo
岩田
僕の高校では、ユニコーン派とブルーハーツ派みたいになって。
まあ、どっちもいい音楽なんですけど。

shingo
どっちもいい。だからそれより、尾崎をどういうふうに持ってくるかっていうのが(笑)。
尾崎豊をいいと言えるかどうかの問題が。

岩田
ああ、そうか。うん。長渕剛とか。

shingo
長渕もそうです。
描いてるものの原動力は、やっぱりそういう熱い感じの、中学生時代ですね。
© shichigoro-shingo
岩田
なるほどね。そうだったんだ。
ブルーハーツの話で思い出したんだけど、実はね、深作欣二(※3)っていう映画監督、いるじゃないですか。

shingo
はい。
※2:深作欣二 … 実録物と呼ばれるヤクザ映画で知られる映画監督。タランティーノやジョン・ウーなどに強い影響を与えた。代表作に「仁義なき戦い」「県警対組織暴力」など。
岩田
僕、すごい好きなんですけど、あの深作欣二が、ブルーハーツの大ファンだったっていうのを読んで。

shingo
ああ、そうなんですか。

岩田
そこ、繋がっちゃうんだっていうのを、つい半年前に僕、知りました。

shingo
へえー。なんかすごいですね。

岩田
なんか想像つかなかったです。

shingo
ええ、まったく。
© shichigoro-shingo
岩田
交わる場所がまったく見当たらなかったんで。
ただどちらも本質でやってる人たちじゃないですか。ダサいって言われるとか、そういうことじゃなくて、「人間の上っ面をぜんぶ取っ払ったところで演出するとこういう映画になる」ってやってる映画監督が、「上っ面のメロディーをぜんぶ取っ払ったところで音楽つくるとこうなる」っていうミュージシャンに…

shingo
ああー。実は繋がっている、共感してるっていうのが。

岩田
そりゃ、きますよ、身体の奥に。

shingo
そういう人間に、なりたいというか、憧れちゃいますね。そういうふうになりたいな。

岩田
でもシンゴさんの絵は、ブルーハーツ的ではない。むしろ逆というか。繊細しごくな。

shingo
いや、これ、どうなんですかね、繊細とは思わないんですよね。
ある意味、仕事的には密度をあげてるふうに見せてるつもりで。
野暮ったいけど、とにかく手を動かして、ガーって描いて、

岩田
パイプの描写とかすごいです。
© shichigoro-shingo
shingo
でも、けっこうテクスチャー使ってるんで。そんなに描いてる時間、たいしたことないんで。
僕ん中では、土っぽいことやってるなって思ってるんです。そんなにウケがいい絵でもないだろうし、ハイソな感じではないだろうし。
それに僕の知りあう作家さんとかでも、すごい好きだなって思える人はやっぱり、みんな心に闇を抱えているというか。パンクっぽい精神を持ってる人っていうのが多くて。

岩田
闇というけど、実は奥行きですよね。
それをなんとかね。それが実は人類史の王道なんじゃないかっていうことを僕は言いたかったりするんですけど。むしろ今は見えなくなっちゃった人たちが暴走してる社会であって、見えてる人たちが「こうじゃないよね」って言っても、お互い無視しちゃってるような状況で。
ほんとは見えてる人たちはちゃんと出てもらって、ちゃんとそれを伝えて、社会を作ってもらいたいなっていう気持ちが、やっぱりこんな僕にもあって。

shingo
でも難しいですよね、そもそもそういう人たちは仕事に就くのも難しい。

岩田
たしかに難問です。そういう人たちほど、自分が生き延びるだけでも限界だったりしますからね。
© shichigoro-shingo
岩田
シンゴさんの絵って、みんな深読みしたがるんじゃないかなって思うんですね。

shingo
ああ、そうです、そうです。

岩田
でも、そうじゃないんだろうなっていうのは、

shingo
やっぱいろいろ言われるんですね。

岩田
どっちかっていうっと、様式の人なのかなあと。

shingo
意味のない世界なんですよね。

岩田
ひたすらビジュアルですよね。

shingo
ビジュアルですね。
こういう雰囲気のものでも、出てくるキャラクターにはあんまりネガティブ感を持たせないよう意識して描いてたんですね。最近は、それすらもあんまり考えなくなってきたんですけど。
© shichigoro-shingo
岩田
でもダークと言われ、その重さに意味があるように言われるんだろうなあと。

shingo
そうですね。ダークとか、ちょっとグロいっていうふうに思われるんですけど。
自分が思うカッチョいいものっていうのは、暗い世界があって、そこのなかでの普通のものだったりとか、そういう感覚っていうのがカッコいいと言うか、美しいという気がして。

岩田
うんうん。なんかそういうものが、美意識のカタチとして感じるなあ。

shingo
哲学とか、そういうものではないんですよね。

岩田
職人さんなんだなっていう感じがするんだなあ。

shingo
職人さんみたいなのにはなりたいなと思いますね。
アートでは決してないな、と。
© shichigoro-shingo