土方 沼作(ひじかた ぬまさく)先生のプロフィール
女でめし食う?色事師。陸前の国生まれ。江戸居住。
物心ついてより人生でただの一度も女を欠いたためしなく、今もおよそ5人の女たちと逢瀬する日々。仕事はあまりしないので金はない。
土方沼作は作り名で、本名は秘密である。
いつからあの、女にモテるというか、そういうふうになったの。
目覚めた、みたいな。
なんだろ、相手のために、みたいなころ、アンパンマン時代は、まったくダメだったね。
…?
アンパンマン時代。
僕の頭を食べなよ、みたいなころは、まったくダメだった。
試行錯誤したの?
そういうわけでもなくて。
ただ、
なんで1人にしないかんのだろう
、っていうのはずっと思ってた。
えっ、なに?
なんで1人に決めなあかんのだろう、って。
(笑)
アンパンマン時代のころからそう思ってて。
しかもオレ、できないから、1人に決めるのが。
何歳ぐらいのことですか?
19とか、20歳とか、だね。
それからオーバーラップするようになっていったの。
オーバーラップっていう表現初めて聞いた(笑)。
最初は「これはいかん」って思った。
なんだけど、どうも、世の東西を問わずいろんな本を読んでいくと、こういう価値観っていうのは、ごくごく最近、我が国に入ってきた価値観だっていうのを。
明治以後のことで。
あっ、ちゃんと勉強したんだ。
ぼんやりと考えてたね。勉強ってほどではないんだけど、気になってたんだろうね。
気になるから、そういう情報が入ってくる?
うん。だから普通に時代小説とか読んでても、そういうところに食いつくんだよね。
なんだオレ、普通じゃん、みたいな。
まあ別に
こんなの悪徳でもなんでもないな
、って思って。
(笑)
でも、そうだなあ、1人に全部を担当させるっていうのは、させるのもするのも酷な感じがしてね。
この人のこういう面が好き、この人はこういう面が好き、この人はこういう面が好きっていう…
分業制だ。
そう。
オールインワンではお互いキツい。
それはいいんですけど、望んでも普通、人はそういう状況を作れないじゃないですか。
何人もの女性と付き合いたいと思っている男は、世の中にいっぱいいると思うんですけど。
単純な物理学だと思うんだよね。2倍の人と付き合おうと思うんだったら、自分、半分になる覚悟がいると思う。
だって、それだけ、アイデンティティも2倍使わなきゃいけない。いくら、ほら、エネルギー抑え目で生活したとしても、少なくとも、どうだろうな、
平均寿命まで生きられるっていうことはないと思う
。
そんなに使うんですか、やっぱり。
うーん。これは単純に物理学の問題のような気がしてね。
使うエネルギーが多ければ、そのぶん命が尽きるのも早いんじゃないかと思う。
ショートスリーパーは短命だ、みたいな。
うん。
長生きもしたい。でもそんなに手間もかけたくない。けどいっぱい付き合いたい。そんなこと言っても、そりゃ、難しいよ。
そのぶん仕事のパワーは減らして…
…。
…。
ん? オレ?
はい。
それはね、
極力減らしてる
。
(笑)
もうね、ここが限界ラインだろ、っていうとこよりも、もうちょい落としてるぐらい。
(笑)
…。
そういうふうに調整してるんですか?
してる。
それでも、寿命は減ってると思う
。
やれない、じゃなくて、やってないんだよね、仕事?
やってない。意図的に。
すごいな。
そこだけは削れるだろう、と。
(笑)
だから仕事は骨組みしか残ってない。
土方先生がなんの仕事をされているかは、…秘密です。