



ASPESI ブランドクロニクル~シンプルさは、究極の洗練である。~
レオナルド・ダ・ヴィンチは、自らの芸術性についてこう語っている。
600年の時を経て、そんな同郷の士による遺訓を継承するかのように
ベーシックを遊ぶことにこだわり続けてきた「ASPESI(アスペジ)」。
誕生から半世紀を迎えた老舗の魅力にMODERN BLUEが深く、迫ります。
ASPESI PROFILO
Paese生産国
Origineブランド名の由来
Concettoコンセプト
Tecnologiaテクノロジー
ASPESI STORIA
MINI FIELD VENTO
feat. M-65
1986年、イタリアにおけるベスパブームの影響を受けたアスペジはブランド初となる「M-65」シルエットを用いた新作ジャケットを発表。その後、「M-65」はブランドを代表するアイコンとなり、2011年にはナイロンタフタ素材でモダナイズしたパッカブルブルゾン「MINI FIELD VENTO」がデビューしました。以来、毎シーズンのアップデートを重ねながら、軽快かつカジュアルなモダンミリタリーを体現し続けています。

SPRING/SUMMER ver.
優れた撥水性を持つポリミアド混紡クロスとポリエステル素材を用いたことで、日常の軽い雨程度であれば弾くよう仕上げられています。シワになりにくく携帯にも安心で、キメ細やかでしっとりとした上品な光沢感は、さらり羽織るだけで装いをよりエレガントに演出してくれます。

AUTUMN/WINTER ver.
表地には堅牢で艶やかなポリエステルタフタ生地を採用。ベースとなるSPRING/SUMMER ver.とビジュアルはほぼ変わらないまま、軽量ながら保温性の高い中綿仕様に。この季節、冷気の侵入を防いでくれる2WAY開閉式や、手袋をしていても着脱しやすい長めのジップトップが嬉しい限り。
Q.モデルとなった「M-65」とは?
「M-65」は第二次大戦中の1943年に登場した米陸軍フィールドジャケット「M-43」の系譜に連なり、モッズコートとして知られる「M-51」を経て、1966年に1stモデルが誕生(当時のアメリカはベトナム戦争の最中にあり、まさにこの頃アルベルト青年はアスペジを立ち上げている)。1976年公開の映画『タクシー・ドライバー』でロバート・デ・ニーロがこの2ndモデルを着用したことで一般にも浸透していった。主にフードを内蔵できるスタンドカラー、肩のエポレットに4つのポケット、フロントのダブルクロージャ―などが特徴。フィールドジャケットの「完成品」として評価が高い。
Q.「MINI FIELD」とは?
「MINI FIELD(ミニフィールド)」はアスペジ独自の規格で、ジャケットの上に羽織ると、少し裾がのぞくぐらいのやや短めなラインにて設定されており、アスペジの商品の中でもより日本人の体型に合わせやすいシルエットとされている。


ASPESI CRONOLOGIA



1960
それはミラノ郊外にある
小さなシャツ工房から始まった
ジョルジオ・アルマーニが米TIME誌の表紙を飾り、イタリアのファッションがやがてモードの大国と成長していく、その前夜にあった1960年代。そんな時代のうねりからはまだほど遠いミラノ郊外で、25歳の青年アルベルト・アスペジは、両親が営むシャツ工房を拠点に新しいシャツメーカー「ASPESI(アスペジ)」を創業する。多くのイタリア人がそうであるように父の背中を追いかけて育った彼は、良質なシャツづくりへと邁進していく。

今でこそハイテクなミリタリーの側面が強いアスペジだが、シャツやジャケット、コートなど、イタリアクラシコの残り香を色濃く感じさせる名品も数多い。
ASPESI ピーコート
「PEAK BOILED」

1970
その後の飛躍を予感させる
アルベルトの斬新な「着眼点」
「良質なシャツを作るメーカー」として徐々に知名度を上げていったアスペジ。旧き良きイタリアらしいファクトリーブランドとして歩んでいくかに思われたが、当時から卓越した目利き力を持つアルベルトは、より広い世界を渇望していた。彼が目をつけたのは当時まだアウトドアのイメージが強かった「ダウンジャケット」。これをイタリアの街並みにもなじむダークカラーにモデファイしたことが、アスペジにとって最初の大きな転換点となった。

柔らかく温かなダウンをふんだんに使った、ボリューミィなジャケット。ミリタリーブルゾンと並ぶ、アスペジの主力商品として冬の定番アイテムとなっている。
ASPESI ダウンジャケット
「PINGUINO FUNDAMENTALS JACKET」

1980
「M-65」1stモデルがデビュー
ブランドの顔がついに誕生する
創業から18年目を迎えた1986年のFWシーズン、アスペジはついに「盟友」とも呼ぶべき象徴的なアウターと出会う。それが米軍フィールドジャケットのアイコン「M-65」。オリジナルはその数年後に生産が終了し、軍用からひとつのファッションアイテムへとその役割が変わりつつあった頃。街着としてスタイリッシュに解釈されたアスペジのM-65は新たな時代へのメルクマークとなり、その後30年以上にわたりブランドの顔となっていく。

こちらはM-65のシルエットをベースに、現代風に解釈したニューモデル。シワになりにくい、撥水性にすぐれた高機能の生地でモディファイされている。
ASPESI ミリタリーブルゾン
「NEW CAMP JKT3」

1990
3年代で続いた
ヒット作によって
トップへの階段を駆け上がる
良心的なシャツ工房から世界的なブランドへとステップアップを続ける中、1970年代のダウンジャケット、1980年代のM-65に続く第3のヒットが1990年代に生まれる。それは1900年代後半にミラノで発生したアスペジのダウンベストブーム。世紀をまたぎ、2000年代まで続いたこのムーブメントにより、ブランドの評価はさらに高まっていく。また2010年代に入ってからは当時のダウンベストをさらに現代的に解釈した「AGILE」も登場した。


2000-2010
「M-65のアスペジ」が定着し
イタリアから日本、
そして世界へ
飛躍的な成長を遂げたアスペジは、21世紀に入りハード面の改革に邁進する。2005年SSにはデザイナーにローレンス・スティールを招聘すると同時に、日本ではファーストリテイリングと三菱商事に本国本社を加えた三社による合弁会社「アスペジ・ジャパン」を設立(のち清算、現在はフィーゴが国内での独占輸入販売権を持つ)。会社機能も移転し、世界各国に旗艦店を広げていく拡大戦略を進め、イタリアを代表するビッグブランドに成長した。

この頃からM-65の大胆な再解釈も進む。本作ではM-65をベースにしながら、ガーメントダイ加工を施したコットンギャバジン製でライトウェイトに表現。
ASPESI フィールドジャケット
「GIUB MINIFIELD COT」

2020
幾つもの「顔」を持つ
ブランドへ――
今なお、アルベルトの挑戦は続く
アスペジといえば高機能ミリタリーの代表格。そんなイメージが定着した今、アスペジは再び何度目かのメタモルフォーゼを遂げようとしている。より現代的なカジュアルファッションとしての提案が増え、ミルスペックの匂いを感じさせない新作が増えてきているのだ。とはいえ、顔であるM-65などもちろん健在。今も現役のアルベルトが率いる中、アスペジはより深みのあるブランドへと進化していくその途上にあると言えるだろう。
