



ASPESI ブランドクロニクル~シンプルさは、究極の洗練である。~
レオナルド・ダ・ヴィンチは、自らの芸術性についてこう語っている。
600年の時を経て、そんな同郷の士による遺訓を継承するかのように
ベーシックを遊ぶことにこだわり続けてきた「ASPESI(アスペジ)」。
誕生から半世紀を迎えた老舗の魅力にMODERN BLUEが深く、迫ります。
ASPESI PROFILO
Paese生産国
Origineブランド名の由来
Concettoコンセプト
Tecnologiaテクノロジー
ASPESI CRONOLOGIA



1960
それはミラノ郊外にある
小さなシャツ工房から始まった
ジョルジオ・アルマーニが米TIME誌の表紙を飾り、イタリアのファッションがやがてモードの大国と成長していく、その前夜にあった1960年代。そんな時代のうねりからはまだほど遠いミラノ郊外で、25歳の青年アルベルト・アスペジは、両親が営むシャツ工房を拠点に新しいシャツメーカー「ASPESI(アスペジ)」を創業する。多くのイタリア人がそうであるように父の背中を追いかけて育った彼は、良質なシャツづくりへと邁進していく。


1970
その後の飛躍を予感させる
アルベルトの斬新な「着眼点」
「良質なシャツを作るメーカー」として徐々に知名度を上げていったアスペジ。旧き良きイタリアらしいファクトリーブランドとして歩んでいくかに思われたが、当時から卓越した目利き力を持つアルベルトは、より広い世界を渇望していた。彼が目をつけたのは当時まだアウトドアのイメージが強かった「ダウンジャケット」。これをイタリアの街並みにもなじむダークカラーにモデファイしたことが、アスペジにとって最初の大きな転換点となった。


1980
「M-65」1stモデルがデビュー
ブランドの顔がついに誕生する
創業から18年目を迎えた1986年のFWシーズン、アスペジはついに「盟友」とも呼ぶべき象徴的なアウターと出会う。それが米軍フィールドジャケットのアイコン「M-65」。オリジナルはその数年後に生産が終了し、軍用からひとつのファッションアイテムへとその役割が変わりつつあった頃。街着としてスタイリッシュに解釈されたアスペジのM-65は新たな時代へのメルクマークとなり、その後30年以上にわたりブランドの顔となっていく。


1990
3年代で続いた
ヒット作によって
トップへの階段を駆け上がる
良心的なシャツ工房から世界的なブランドへとステップアップを続ける中、1970年代のダウンジャケット、1980年代のM-65に続く第3のヒットが1990年代に生まれる。それは1900年代後半にミラノで発生したアスペジのダウンベストブーム。世紀をまたぎ、2000年代まで続いたこのムーブメントにより、ブランドの評価はさらに高まっていく。また2010年代に入ってからは当時のダウンベストをさらに現代的に解釈した「AGILE」も登場した。


2000-2010
「M-65のアスペジ」が定着し
イタリアから日本、
そして世界へ
飛躍的な成長を遂げたアスペジは、21世紀に入りハード面の改革に邁進する。2005年SSにはデザイナーにローレンス・スティールを招聘すると同時に、日本ではファーストリテイリングと三菱商事に本国本社を加えた三社による合弁会社「アスペジ・ジャパン」を設立(のち清算、現在はフィーゴが国内での独占輸入販売権を持つ)。会社機能も移転し、世界各国に旗艦店を広げていく拡大戦略を進め、イタリアを代表するビッグブランドに成長した。


2020
幾つもの「顔」を持つ
ブランドへ――
今なお、アルベルトの挑戦は続く
アスペジといえば高機能ミリタリーの代表格。そんなイメージが定着した今、アスペジは再び何度目かのメタモルフォーゼを遂げようとしている。より現代的なカジュアルファッションとしての提案が増え、ミルスペックの匂いを感じさせない新作が増えてきているのだ。とはいえ、顔であるM-65などもちろん健在。75歳にして今も現役のアルベルトが率いる中、アスペジはより深みのあるブランドへと進化していくその途上にあると言えるだろう。

ASPESI STORIA
STORIA1
M-65
feat. ASPESI
「M-65」は第二次大戦中の1943年に登場した米陸軍フィールドジャケット「M-43」の系譜に連なり、モッズコートとして知られる「M-51」を経て、1966年に1stモデルが誕生。当時のアメリカはベトナム戦争の最中にあり、まさにこの頃アルベルト青年はアスペジを立ち上げている。1976年公開の映画『タクシー・ドライバー』でロバート・デ・ニーロがこの2ndモデルを着用したことで一般にも浸透。その影響もあり、1986年にイタリアブランドのアスペジでもM-65シルエットを用いた新作ジャケットを発売するようになった。
M-65の特徴は?
主にフードを内蔵できるスタンドカラー、肩のエポレットに4つのポケット、フロントのダブルクロージャ―などが特徴。フィールドジャケットの「完成品」として評価が高い。
STORIA2
Thermore
feat. ASPESI
「Thermore(サーモア)」は1972年にミラノで創業した機能中綿素材メーカー「サーモア社」による高機能ポリエステル綿で、アスペジでも「M-65」フィールドジャケットの中綿に取り入れるなど、多くのアウターで採用されている。いわゆるダウンに比べ軽量であり、かつ同量でも1.8倍の暖かさを誇るとされ、スタイリッシュなシルエットと高い保温性を追求するファッションブランドでも御用達。また、天然ダウンがエシカルの面で縮小傾向のある中、ハイスペックでローコストな次世代素材としても近年注目を集めている。
Thermoreの特徴は?
繊維の中に閉じ込めた空気を長時間逃がさないことで高い保温性を保つ。またプルーフの必要がなく毛抜きも起きにくいため、デザインの自由度が増すことも愛される一因だ。
NEW FIELD JKT
これぞ温故知新の結晶といえる
アスペジM-65の「究極回答」
1986年秋冬に発売されたアスペジ初の「M-65」を当時の型紙から復刻したモデル。ゆったりとしたシルエットやオーセンティックなディテールはしっかり踏襲しつつ、生地はコットンから、ハリと滑らかさに秀でたスーパーハイテクマイクロフィラメントのナイロン素材へとアップデート。中綿にはアスペジのもう一つの顔「Thermore」を採用、まさにアスペジがM-65とともに歩んできた30年超の結晶たる傑作と言える。
MINIFIELD
WOOL VENTO
M-65の現代的解釈を追求した
都会的なミリタリーアウター
ジャケットの上に羽織ると、やや裾がのぞくぐらいの着丈感を持ち、一枚仕立てで仕上げることで軽量なのも特徴。防水性のあるポリミアド混紡クロスとポリエステルを用いた生地は軽量かつ頑強なつくり。NEW FILED JKTと同じく高級中綿の「Thermore」を搭載しつつ、こちらは起毛素材の裏地を加えることで、さらに暖かさを増している。アスペジが志向してきたシンプルさの追求と、街着で使うための現代的解釈が結実した一着。
65 REPLICA
ミリタリーアウターとしての
ルーツを堪能できるオマージュ作
アスペジのM-65バリエーションの中でも、最も本来のM-65を忠実に再現したモデルとされる。ナイロン×ポリエステルを独自の比率で混紡した通称「アスペジクロス」を採用することでハリやコシが生まれ、表面に施されたガーメント処理とあわせ、本来のミルスペックらしい質実剛健さを生み出している。同時にジャケットやスーツに合わせてちょうどよい丈感をコンセプトに作られており、ややゆとりのあるシルエットも特徴的だ。
THERMORE COAT
シーズンをまたいで楽しめる
保温性抜群の高機能中綿コート
アスペジが高級中綿素材「Thermore」を用いた通称「サーモアシリーズ」のコート。M-65など、アウターそのもの中綿として採用されているケースとは異なり、取り外し式のライナーに「Thermore」が採用されているので、季節や気候に応じてタイプチェンジすることができる。またシェルファブリックにはマットなシワ加工も施されており、より風合いのある着こなしを楽しむことができる。アスペジのコンテンポラリーな一面を感じさせる逸品。